Sony VAIO PCG-861/BPの電源トラブルの例

(この件につきましては私個人および「Sony」は、一切の保障および補償をしていません。特に「Sony」に対しての問い合わせなどは迷惑になるので、しないでください。)

0)現象

@電源スイッチを押しても電源入らず。(電源ランプも点灯せず。)

A1日程度、電源をコンセントに挿しっぱなし(充電ランプはつかない)にしていると一瞬だけ
 電源ランプが点灯する。(電源は入らない。)

B電源投入後、正常使用中に突然(不規則に)電源が切れる。

C無操作状態で、ウィルスチェックなど常駐プログラムを外してもCPU使用率100%
 の状態が長く(2〜3分)続くことが頻発する。

 

1)発生条件

@電源をコンセントから抜いて1ヶ月以上放置してあった。

Aバッテリー電圧は、正常範囲(約12V程度)で充電レベル80%以上。

Bパソコンの製造後、3年以上経過している。

 

2)その他の要件

@本現象が、発生するまでCPU・Memory・HDDその他の機器に異常は無かった。
 または、Memory増設・HDD交換などは、行っているが動作確認時に異常は無く本現象との直接
 の因果関係は無いと思われる。

A本現象に直接係わるような機械的・電気的衝撃(本体の落下・転倒および落雷などによる過電圧
 入力)は無かった。

B放置期間を含めて、パソコンの保管・使用条件から外れる気温・湿度等の気象条件下におくことは
 無かった。

 

3)原因の特定

@予想される原因

  1. バッテリーおよびセカンドバッテリーの消耗
  2. 電源アダプターの故障
  3. 本体内蔵のバックアップ電池の消耗
  4. M/B(メインボードまたはマザーボード)の故障
  5. CPUの故障(電源管理部または発熱による熱暴走)
  6. HDDその他の周辺機器の故障(発熱による部品の劣化など)

※実際、CPUをフルスピードで動作させていると相当の発熱(多分50℃以上)があります。

A可能性の検討

 バッテリーの消耗は、使用状況にもよりますが充電率80%以上であるため可能性は低いと
考えました。また、CPU・M/Bの故障は、部品の入手および工具・治具の関係で手が出ませ
ん。HDD・その他周辺機器の発熱での故障は可能性が高いのですが、OS(Windows)のチェッ
クでは正常動作しているようです。電源アダプターは、テスターで電圧を測ると定格通りの出力が
出ていたためOKとしました。(電源アダプター自体は、故障が少ないことと仮に故障しておれば
出力電圧が不安定など「現象が固定」しているだろうと思います。)

結果として、「3.本体内蔵のバックアップ電池の消耗」に対して確認と対策を行うこととします。

B確認

 本体内蔵のバックアップ電池は、直径12mm厚さ2.0mm(NH1220型?)のニッケル
水素のコイン型2次電池を6個直列(定格7.2V/15mAh)に繋いだものです。
 バックアップ電池の電圧をテスターで測定すると、約2.7Vとかなり低めになっています。
おそらくこれが原因と考えました。

(じつは、以前にも同様の現象で、バックアップ電池を9Vの角電池に抵抗をはさんで充電したこ
とがあります。ノート型に限らずデスクトップ型でも同様の現象は起こり、バックアップ用のCR2032
などのボタン電池を交換することで、「パソコンの電源を入れても起動しない」という現象が直る
ことがあります。→全部ではないことに注意)

4)対策と経過

@充電を試みる

  1. 2次電池の充電には、電圧と電流の規定値があります。一般的には、定格電圧の1.1〜
    1.2倍程度電圧と定格電流の1/5〜1/10程度の電流で10〜15時間充電します。
  2. ここでは、9Vの角電池(100円ショップのもので十分)に10KΩ程度の抵抗を繋いで約10時
    間程度充電します。(急ぐ場合は、3.3kΩで3時間程度でも起動できると思います。)
  3. 充電は、18〜22番程度の針金を使ってコネクタに接続しますが「ショートや極性逆接続」
    を起こさないように十分注意してください。
  4. 充電完了後、テスターなどで電圧の確認を行います。(ここで、電圧が6V以上あればOK)
  5. バックアップ電池・バッテリー・電源アダプターを装着して起動します。
  6. −−−うまくOSが起動すれば、これで修理は完了!(です。)

A起動ができなかった場合

  1. 起動に失敗した場合、電源アダプターをコンセントに差し込んだまま約1日放置して様子を
    みます。(電源ランプも充電ランプも点灯しませんが、これには意味があるようです。)
  2. 再度、起動してみます。−−−うまく起動できればOK!!
  3. これでダメなら、再度バックアップ電池の電圧を測りなおします。
  4. 電圧が、6V以上ある場合は、バックアップ電池は正常ですから、別の原因を探るしかあり
    ません。(6V以下の場合は、バックアップ電池の寿命かもしれません。→次の充電ができ
    なかった場合を検討します。)

B充電ができなかった場合

  1. 充電を行っても電圧が上がらない場合や、電圧がすぐに下がってしまう場合は、バックアッ
    プ電池の寿命が考えられるのでこれを交換することになります。
  2. バックアップ電池は、ニッケル水素(NiMH)2次電池で「Varsa NiMH 7.2V 15mAh」と表示
    されています。
  3. 形状から1.2V15mAhのコイン型2次電池を6個直列に繋いだものであることがわかります。
  4. この型の電池は市販されていないため(工業用部品)一般に入手は困難です。
    入手方法としては、家電の修理をしているところに問い合せるか(たいていは無理でしょう。)
    携帯電話やコードレス電話機を分解してニッケル水素の同等品を入手するしかないと思い
    ます。(ニッカドはメモリ効果や充放電特性の違いが大きいのでやめたほうがよいでしょう。)
  5. 格好を気にしなければ、外付けでアルカリ単3を4本直列が一番安全ですが、入手や取り扱い
    が比較的容易で本体に内蔵可能なコイン型電池であるCR2032の2個直列を試してみます。
    (CR2032は1次電池で充電はできませんから、いずれ近い将来に再交換が必要になります。)

C電池ホルダーの作成

  1. CR2032を4個以上(またはアルカリ単3電池4本直列のもの)を用意します。
    バックアップ電池からコードを3〜5cm付けてコネクタを外します。(バックアップ電池は保管し
    ておきます。)
  2. 500ml以上の乾燥したペットボトルから約40mm×50mmのサイズの長方形を切り出します。
  3. 約40mmの短辺のほぼ中央付近に電池の厚み分約3mm幅の折り返しを入れて折ります。
    中央部からの2つ折では電池をはさんだときに電池の厚みで電池中心部が浮いてしまいます。
  4. 50mmの長辺中央部に適当なサイズ(2〜3mm幅)の仕切り板を貼り付けます。
  5. 電池の電極を2個直列でショートしないように貼り付けます。(これで電池ホルダーは完成)
  6. 電池をホルダーにはさみ本体のバックアップ電池が収納されていた隙間にはさみます。
    (たいていは、電池とホルダーの厚みで電極が接触するはずです。)
  7. バックアップ電池から外したコネクタを本体に差し込みバックアップ電池の電極に繋ぎます。

D起動

  1. キーボードなどのカバーは開けたままで、起動の準備を行います。
  2. バックアップ電池を本体に繋いだ後、バッテリー・電源アダプターを取り付けて電源アダプター
    から電力を供給します。
  3. テスターで、バックアップ電池の電圧を調べると、徐々に電圧が下がるはずです。
    アルカリ単3電池4本直列のものをバックアップ電池に並列にいれるか、電圧が4Vを切ったら
    新しい電池と交換しながら放置してください。
    (この時点で、起動はできますが、非常に不安定ですぐ電源が落ちます。)
  4. 約2時間程度でバックアップ電池の電圧が約6.2V・電流が約0.1〜0.2mA付近で安定する
    はずです。安定しない場合は更に様子をみて、ダメな場合はほかの原因を探ります。
    アルカリ単3電池を繋いでいない場合は、ここで、CR2032を更に交換します。
    アルカリ単3電池を繋いでいる場合は、ここで取り外します。
  5. 電源スイッチを入れSonyのロゴが出たらBIOSセットアップに入るためF2を押します。
  6. BIOSセットアップは、たいてい日付・時刻が狂っていますから正しい日付・時刻に変更します。
    その他の項目も初期状態になっていますから適当に調整を行います。
  7. BIOSセットアップを終了してOSが正常に起動すれば、修理は完了です。

5)その他

@バックアップ用電池CR2032について

CR2032は、(公称)電圧3.0V・200mAh:物理サイズ 直径20mm・厚さ3.2mmのコイン型リ
チウムイオン1次電池です。(充電できない。)

電源アダプターをコンセントに差しっ放しであれば約3〜6ヶ月程度は持つと思われます。

Aバックアップ用2次電池について

もし手に入るようであれば(すべて工業部品のため入手は困難)、CR2032にかえて以下の2次電池
が代用できると思います。

 Sony     リチウムイオン2次電池  US2025-V01 (公称)電圧3.3V・45mAh

 マクセル   マンガンリチウム2次電池 ML2032-T17 (公称)電圧3.0V・65mAh

 パナソニック マンガンリチウム2次電池 ML2020-V1A (公称)電圧3.0V・45mAh

(VAIOでは、バックアップ電池への充電をプログラムか専用回路で行っているようで充電電圧・電流の
特性が大きく違っていると本体回路に悪影響を及ぼす可能性があります。電圧・容量の近いものを使っ
たほうが無難です。)